本書の第1版が刊行されたのは平成5(1993)年です。この本で勉強して看護師国家試験に合格された方々はもうすっかり,それぞれの医療機関の中心的ナースとして活躍されていることと思います。
ところで,本書の紙面構成は当時も今も変わっていません。『疾患と看護』という名前の通り,ある疾患に焦点を当てて,その原因・病態・疫学などをまず取り上げ,次に,その疾患特有の症状を説明し,その疾患名を特定するための検査方法を提示し,さらに,現在行われている治療の実際を明らかにして,最後に看護師として取り組んでいくべき看護方法と技術を解説していくという構成になっています。
私たちを取り巻く医療環境がどのように様変わりしようとも,看護の本質は変わりません。病気に立ち向かっていく患者さんの手助けをするためにも,まず病気のことを知らなければ始まりません。現在発行されている『平成22年版看護師国家試験出題基準』をみても,看護師に求められている知識・技能がどのようなものなのかがよく分かります。
出題基準のプロットはこうです。
・看護師としての基本的かつ重要な知識と技能を身に付ける。⇒「必修問題」
・看護の対象となる人間の身体内部のことを学ぶ。⇒「人体の構造と機能」
・病気に至るプロセスと病気そのものの特性について理解し,個々の治療方法を知る。
⇒「疾病の成り立ちと回復の促進」
・社会的存在としての人間を理解し,公衆衛生と社会保障について学ぶ。
⇒「社会保障制度と生活者の健康」
・看護の基本となる考え方・技術,看護の役割について理解する。⇒「基礎看護学」
・在宅看護の特徴,療養者・家族,在宅における看護実践について把握する。
⇒「在宅看護論」
・患者を年齢別・病態別に分け,それに応じた最適な看護の知識と技術を学ぶ。
⇒「成人看護学」「老年看護学」「小児看護学」「母性看護学」「精神看護学」
本書は,出題基準における「成人看護学」の対象疾患を中心に掲載していますが,「老年看護学」「小児看護学」「精神看護学」の代表的な疾患も取り上げています。各々の疾患については,その病態生理や治療を分かりやすく解説してありますので,出題基準の「疾病の成り立ちと回復の促進」も同時に学べるようになっています。もちろん,基本的なことを扱う「必修問題」のいくつかの項目も本書でカバーできます。
本書で取り上げている疾患総数は118です。かなりの数になりましたが,イラストを繰り返し目で追うことによって,必ず脳裏に焼きつくはずです。そして,その残像が国試当日に浮かんでくることを信じて下さい。また,この第6版からコンパクトなハンディサイズになりましたので,場所を選ばずに,いつでも手軽に勉強できるようになったと思います。
最後に,本書で国試に合格した先輩たちがたくさんいらっしゃることを付け加えさせて頂きます。
2009年12月 テコム編集委員会