第109回歯科医師国家試験は,平成26年版歯科医師国家試験基準(ガイドライン)に基づき,国民のニーズに対応できる歯科医師を確保できるように,時代の要請のある事項,社会問題化している事項に重点を置いて出題されている。
特に下記の5項目については出題を更に充実したものとする傾向が強くなってきている。
1)高齢者や全身疾患を持つ者への対応に関する出題(全身疾患,検査,多職種連携)
2)歯科口腔保健の推進に関する法律の制定を考慮した歯科疾患の予防管理に関する出題
3)医療保険,介護保険を含む現行の社会保障制度に関する出題
4)口腔と全身疾患に関係する出題(禁煙指導,支援,食育と食の支援)
5)救急災害時の歯科保健対策,法歯学に関する出題
合格基準も今までの必修,領域別,禁忌肢に加えて,必要最低点の設定がなされた。
第109回歯科医師国家試験の合格基準は,一般問題(必修問題を含む)を1問1点,臨床実地問題を1問3点とし,
① 領域A(総論) 65点以上/109点
② 領域B(各論Ⅰ〜Ⅲ) 128点以上/184点
③ 領域C(各論Ⅳ〜Ⅵ) 122点以上/196点
④ 必修問題 56点以上/70点
但し,必修問題の一部を採点から除外された受験生にあっては,必修問題の得点について総点数の80%以上とする
⑤ 必要最低点 0領域以下
⑥ 禁忌肢問題選択数 2問以下とする
以上の合格基準で,今年度第109回国家試験の結果は,次の通りである。
| (出願者数) | (受験者数) | 合格者数 | 合格率 |
全 体 | 3,706人 | 3,103人 | 1,973人 | 63.6% |
新卒者 | 2,536人 | 1,969人 | 1,436人 | 72.9% |
昨年,第108回と較べて同様であり,決してよい成績ではないが,現在の歯科医師過剰の現況から考えて,合格率の低下は今後も続くであろうと推測される。
そこで第110回の歯科医師国家試験はどのような傾向にあるかが問題となる。厚生労働省によれば,歯科医師国家試験出題基準は4年毎に改定されているので,第107回から第110回までは同様な傾向が考えられる。
いずれにしても,前年も申した通り,「孫子語録」にあるように,「いくさをするにはまず敵の実情をさぐり,自分の力を知って行えば必ず勝てる」ということである。まさに,Answerで扱う過去の試験問題こそ敵の実情であり,勉強した成果を模擬試験で知ることが,己を知ることである。
この本が十分に活用され,国家試験に合格し,歯科医師としてのスタートを切って欲しいと思う。
2016年4月
東京医科歯科大学 名誉教授
DES歯学教育スクール 理事長
榎本 昭二