薬物代謝とは,体内でくすりの形を変えることであり,その薬効や毒性を変動させる中心的な要因として注目されています.本書「医療薬物代謝学」の初版は,基礎的かつ専門的で薬物代謝学の知識を平易な言葉を使い,特に臨床的な意義を中心に要点を絞って,わかりやすくまとめることを意識し,医療薬学や衛生化学にまたがる領域の初学者のための書籍として作成されました.
2010年の初版発刊から7年がたち,本書改訂の機会がやってきました.薬物代謝のエッセンスがぎっしり詰まった本書ですが,現行の薬科大学での新コアカリキュラムに準拠する薬物動態学領域の学部教科書としての位置づけに配慮し,構成を変更しました.すなわち,衛生薬学領域の記述を控え,薬物動態学として必要な,吸収,分布および排泄領域の記載を増やし,平易な記述方式にて統一的に整備統合することを第2版の編者として決断しました.
幸い,初版原稿の再活用については,各著者の先生方の快諾が得られました.当初の本書の目的である薬物代謝を平易に深く理解するために,くすりが体内にとりこまれ,ひろがり,形が変えられて,体外にでていく全過程を繋ぐ編集方針としました.生まれ変わった「医療薬物代謝学第2版」が薬科大学あるいは関連領域の初学者の講義テキストであるだけでなく,副読本や自習書としても活用いただけることを願ってやみません.
2017年11月
山崎浩史
小澤正吾