2012(平成24)年4月から「社会福祉士及び介護福祉士法」が一部改正され,それまで「たんの吸引及び経管栄養は,医師・看護師等のみ実施可能な医行為に該当する(医師法等)」となっていましたが,「一定の研修を受けた介護職員等が,医療者と連携し安全確保が図られている等の条件の下で実施できる」ことになりました。
また,2005(平成17)年に原則として“医行為ではない行為”が具体的に提示されました。“たんの吸引”“経管栄養”といった利用者の命に関わる医行為および“医行為ではない行為”を必要とする利用者は,年々増加しています。
この本は,そのような時代背景を踏まえ,介護者の皆さんが“たんの吸引”“経管栄養”を安全・安楽に実施できるための学習教材として作成しました。一般的な手順を写真を見ながら具体的に学べるように配慮し,手順の横には根拠や留意点についても書き添えましたので,確認いただきたいと思います。
介護は人を相手とする職業であり,よりよいコミュニケーションは利用者の皆さんの生きる意欲にも影響するものと考え,必要最小限ではありますがことばがけの例も示してみましたので,参考になさってください。
内容としては,介護を行ううえで利用者の方々の健康状態を判断する時の基本となる“バイタルサインの測定”や“医行為ではない行為”についてもわかりやすく書き加えてあります。
日常の介護の実践に役立てていただければ幸いです。
2014年4月
著者ら
第1章 たんの吸引
介護職員等による喀痰吸引等の実施のための制度について
喀痰吸引等制度の全体像〔概要〕
たんの吸引に関わる解剖
たんとは
たんの排出機構
吸引圧について
1 たんの吸引時の必要物品
1 吸引器
2 吸引用カテーテル
3 アルコール綿またはウェットティッシュ,ティッシュ
4 洗浄水と容器
5 カテーテル保存容器
6 鑷子と鑷子を入れる容器(必要時)
7 手指消毒液と手袋
8 エプロン
2 介護者の準備
1 手洗い
2 エプロンの着用
3 たんの吸引の手順
1 口腔内の吸引
2 鼻腔内の吸引
3 気管内の吸引
4 人工呼吸器をつけている人の気管切開部からのたんの吸引
第2章 経管栄養
1 経管栄養の基礎知識
1 食物の消化・吸収・排泄
2 嚥下のしくみ
2 経管栄養法
1 経鼻胃管栄養法
2 胃ろう栄養法
3 腸ろう栄養法
4 経管栄養法の栄養剤
5 経管栄養法の日常生活支援
6 経管栄養を受けている人の主な合併症とその対策
7 医療者との連携
3 経管栄養法の実際
1 経管栄養実施時の必要物品
4 介護者の準備
1 手洗い
2 エプロンの着用
5 経管栄養法の手順
1 経鼻経管栄養法
2 胃ろう・腸ろうからの経管栄養法
3 胃ろうからの半固形栄養剤注入法
第3章 バイタルサインの測定
1 バイタルサインとは
2 必要物品
1 体温測定
2 血圧測定
3 脈拍・呼吸測定
4 経皮的動脈血酸素飽和度(SpO
2)の測定(必要時)
■バイタルサイン測定の準備(例)
3 体温測定
1 体温に関する基礎知識
2 体温測定の方法
4 血圧測定
1 血圧に関する基礎知識
2 血圧測定の方法
5 脈拍と呼吸の測定
■脈拍測定
1 脈拍に関する基礎知識
2 脈拍測定の方法
■呼吸測定
1 呼吸に関する基礎知識
2 呼吸測定の方法
6 経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)の測定
1 経皮的動脈血酸素飽和度に関する基礎知識
2 経皮的動脈血酸素飽和度の測定方法
7 意識の観察
1 意識とは
2 意識の観察
8 心肺蘇生法
1 一次救命処置
2 気道の異物の除去
第4章 介護職に認められたケア
◎ 介護職に認められた医行為(特定行為)である「たんの吸引」と「経管栄養」
◎ 医療・介護の連携
◎ 原則として医行為ではない行為
◎ 医薬品に関する介助6項目
◎ 医行為に該当しないもの
◎ 軽微な切り傷・擦り傷・やけどの処置
◎ 皮膚への軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く)
◎ 皮膚への湿布の貼付
◎ 点眼薬の点眼
◎ 一包化された内服薬の内服介助
◎ 肛門からの坐薬挿入
◎ 鼻腔粘膜への薬剤噴霧
◎ 爪切り
◎ 口腔内の刷掃・清拭
◎ 耳垢の除去
◎ ストマ装具の交換・排泄物廃棄
◎ 自己導尿カテーテルの準備・体位保持
◎ 市販のディスポ―ザブルグリセリン浣腸器を用いての浣腸
●巻末資料
■厚生労働省通知
■指示書
■引用・参考文献
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