「解剖と生理学がきらい」,「病理って分かりにくい」。よく看護学生さんから聞く言葉ですが,おそらくほとんどの学生さんが同じような意見をお持ちなのではないでしょうか。
看護師国家試験出題基準では『人体の構造と機能』,『疾病の成り立ちと回復の促進』を『必修問題』の次にもってきています。これは,嫌なことは早めに済まそう,というのではありません。病気やけがに悩む人たちを看護するためには,当然,どのように病気になっていくのかを知らなければ始まりません。つまり「汝の敵を知れ!」というやつです。しかも,異常を来した人間の身体を理解するのにはその正常な姿が分かっていないといけません。だから,早い段階でこの2つを学ぶ必要があるわけです。
本書に掲載した,いわゆる「基礎医学」系の問題はどのくらいの割合で出題されているのでしょうか。平成25年の第102回国試では39問でした。これは,必修問題,一般問題180問の約22%に当たります。しかし,基礎医学を踏破することは,この約40問の点数を確保する以上の付加価値をもたらします。なぜなら,成人看護学や状況設定問題などの臨床系の問題を解くためにも,この基礎医学の知識が役に立つことが多いからです。
本書は,このように大変重要な基礎医学のエッセンシャルポイントを短期間でマスターしてもらうことを目的として出版してきました。ポイントを絞った解説とイラストを上手に活用し,学習効果のアップをはかって下さい。
この第7版では,箇条書きにして,できるだけ文章を短くしました。文字も大きく読みやすくし,重要語句の赤字も厳選しています。
また,解説の合間に国試の既出問題を掲載しています。実際の国試では,どのような出題があったのか,すぐに分かるようにしてあります。解説を読んで理解につながっているかどうか,ご自身の力だめしに利用して下さい。なお,本書ではあえて古い年度の国試問題も載せています。というのは,基礎医学領域は医療技術の革新や医学的・社会的トレンドに影響されにくい分野だからです。要するに,大切なものは昔も今も変わらないということです。
この本によって,皆さんが基礎医学に興味と親しみをもち,国試のみならず臨床の場にも知識を役立てていただければうれしい限りです。
2014年1月
テコム編集委員会