1997年の新設科目である「在宅看護論」は,2008年のカリキュラム改正時 “統合分野” に位置づけられ,現在19年目に入っている。
わが国では,少子・高齢化の進展とともに,介護保険法の施行・改正や医療法の改正など,地域や在宅で療養者の生活や介護を支えていくための諸制度の制定・整備,2012年には地域包括ケアシステムの実現に向けた改正介護保険法が施行され,地域医療構想も推進されている。これらの新たなサービスや施策では,各職種との密接な連携・協働が必要であり,その中で在宅看護の果たす役割は,益々重要となってきている。看護の現場においては,在宅療養を視野に入れた切れ目のない継続看護の実施,退院支援・退院調整のできる看護師の育成が求められているのである。
このような在宅看護を取り巻く社会情勢の変化に伴い,看護基礎教育における在宅看護論の教育内容も徐々に変化してきている。平成26年版の国家試験出題基準では,在宅看護が必要とされる背景,在宅看護の目的・役割と機能,訪問看護の概要,対象理解における生活の視点の重要性,多職種との連携,在宅療養者への自立・自律を促し生活の質の維持・向上に繋げる具体的な知識と技術などの内容が追加修正された。
看護師国家試験においては,他領域の問題にも施設内だけではなく地域・在宅での療養生活を視座にした問題が出題される傾向は近年の特徴でもある。また単純な知識想起型の出題から,より臨床実践に近い形で知識・技術を統合して判断し,解答する能力を問う問題も増えつつある。
本書は国家試験出題基準の改定とともに内容の改編を行ってきたが,第5版となる本書は,平成26年改定の出題基準に準拠した内容になっている。執筆者は,在宅看護の実際の現場(訪問看護ステーション)での経験と「在宅看護論」看護基礎教育にも熟知した者たちで,看護学生に是非理解してほしい事をまとめたつもりである。各章の内容は知識の確認に向けた要点を示し,統計データや法律等,社会情勢を踏まえた内容については最新のものにした。授業後の復習・知識の確認として,実習前後の学習にも大いに活用し,国家試験に向けては,この知識を活用し統合判断し解答できる能力に繋げて欲しい。本書が看護学生の日々の学習と国家試験学習対策として少しでも役立つことを願っている。
2016年3月 著者代表 峰村 淳子