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分子から酵素を探す 化合物の事典

分子をつくる酵素,分子を変換する酵素の情報を的確に入手可能!

分子から酵素を探す 化合物の事典

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   紙書籍 
八木達彦(静岡大学名誉教授)編著
[みみずく舎:発行]
B5判,544頁,1色刷
2009/12/08発行
¥13,200(本体¥12,000+税¥1,200)
ISBN 978-4-87211-974-9
約4,500種の化合物を精選し、五十音に配列。
化合物名から、分子に働く酵素の情報をキャッチ。
新素材の開発や生化学的変換法を探る道しるべ。
巻末に英語名索引・和名索引・化学式索引を収載。
酵素学で重要な化合物とその酵素反応特性を示す。

ま え が き
 生化学,有機化学に関する化合物のデータ表は数多い.たとえば日本化学会編・化学便覧(第5版,丸善,2004),日本生化学会編・生化学データブック(東京化学同人),実験化学便覧(共立出版),酵素ハンドブック(第3版,朝倉書店,2008),英語ではMerck Index,Handbook of Biochemistry(CRC)などがある.本書はこれらの膨大で詳細なデータブックとは,収録するデータの内容が全く異なる特徴をもつ.
 既存データブックや辞典類にはそれぞれの特徴があるが,ある分子がどのような酵素反応で生じ,どのような酵素の作用で何に変化するかという観点は重視されない.酵素ハンドブックやIUBMB Enzyme Nomenclatureの酵素表は,酵素名や酵素番号(EC番号)から酵素を探し,反応を調べるには重宝だが,化合物名からその分子をつくり出す酵素や,その分子に働く酵素を探すのは容易でない.しかしある分子について,有機合成ではなく生化学反応による製法を検討するとき,あるいは安全な処理法を考えるとき,または新反応を触媒する酵素タンパクを設計するとき,関連分子をつくる酵素,またはその分子を変換する酵素の情報を的確に入手することが望ましい.そのためには分子名から酵素を探し出せるハンドブックが必要であろう.本書は分子名から酵素を探し出す目的で編纂された化合物辞典である.酵素表を英和辞典に例えれば,本書は和英辞典に相当する.両辞典を駆使することで酵素反応に関わる化合物の全体像を見渡せる.
 本書ではIUBMBに登録されている全酵素の基質と生成物につき,どのような酵素によりつくられ,どのような酵素により何に化学変換されるかをEC番号で表示し簡単な説明を加えた.ひとたびEC番号が分かれば,酵素名,所在,精製法,性質などを報じる一次文献などは,酵素ハンドブック(第3版)を参照するか,IUBMBのEnzyme Nomenclature(http://www.chem.qmul.ac.uk/iubmb/),PubMed(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=PubMed),KEGG(http://www.genome.jp/kegg/),Googleなどインターネットを駆使して入手できる.
 膨大な既知化合物のうち,酵素学の立場で研究対象になった化合物は何か,その化合物の酵素反応的特性は何か? このような疑問に答えるため,あるいは新素材の開発や生化学的変換法を探る道しるべとして本書を利用していただければ幸いである.

 2009年11月11日
 八木達彦


凡   例
 1 化合物(水以外)をアルファベット順,続いて五十音順に配列し,当該化合物を基質または生成物とする酵素の[EC番号]と酵素反応の要点を述べた.他書で参照できる融点,密度,溶解度などは掲載していない.化合物の和名は日本化学会が規定する英語名の字訳を原則とするが,一部ではより通用する名称を用いた.記号・略号が通用している化合物は記号・略号を主見出し語とした.
 2 記号・略号を見出しとする項目では,記号・略号(太字),化合物和名 英語名[別名,分子式 分子量,pK]の順,化合物和名を見出しとする項目では,化合物名(太字)から始めて後は同順に記載.酵素反応を受けるのは中性溶液で存在するイオン形が普通なので,酸の英語名は陰イオンの名称で示す(語尾の-ateを-ic acidに変えれば酸の名称になる.硫酸,リン酸,亜硝酸,酒石酸などは例外).IUBMBで酵素を命名するときに基質として酸の陰イオン名を用いるのと同じである.しかし分子式と分子量は原則として非イオン形とする.炭素化合物の分子式はCHNOPSの順,この後に他の元素(Clなど)をアルファベット順に続けた.
 3 構造式は中性溶液で存在する形(酸は陰イオン形,アミンは主にアンモニウムイオン形)を示す.したがって構造式と分子式ではHの数が異なる場合がある.立体配置を示すため,透視図法.Fischer投影式,環状分子のコンホメーション表示(いす形など),Haworth式,平面への投影図などを使用した.透視図法とは折れ線,楔,点線を用い,Cとそれに結合するHを省略する有機化学の標準画法である.しかし末端メチル基はCH3またはMeと表示するか,位置番号の数字を入れた.立体配置がわからない場合は波線で示す.
 4 ある種の文献(インターネットを含む)では図示された構造式と名称が一致しない.文献により構造が異なる場合もある.各種資料から筆者が正しいと信ずる名称と構造を載せた場合と,不一致の事実を付記した場合がある.
 5 pK値は温度やイオン強度により0.2以上ずれることがある.なるべく25℃の値を載せるよう努めたが,温度やイオン強度の記載のない文献からも拾った.
 6 アミノ酸,単糖はフルネームを記載した.アミノ酸,単糖などの三文字記号とその関連記号はペプチド,オリゴ糖などの残基に限って使用する(アミノ酸,糖残基を含め,本文中の記号,略号はすべて索引で検索できる).(i)ペプチドは,特に断らない限りN端を左に置きα-アミノ基とα-カルボキシ基からなる通常のペプチドを示す.(ii)糖鎖の表示では,フラノースにはfをつけるがピラノースのpは省く.糖鎖の結合位置は三文字記号の間の丸括弧に示す.アルドースのアノマーは単にα,βとするが,ケトースのアノマーでは2α,2βと位置番号も併記する.
 7 ステロイドの構造を正確に表わす名称として,英語では,化合物名を中断して二重結合や置換基の直前に位置番号を挿入する.例えば5α-androst-16-en-3α-olと書き,発音するときはaを補って5α-androsta-16-en-3α-olのように読む.日本語では位置番号を前後にずらしたΔ16-アンドロステノール-3αのような表記もあったが,英語の発音に近いアンドロスタ-16-エン-3α-オールが正式とされ,位置番号を前後にずらした表記法とは五十音順の位置が異なる.本書では正式名称で示し,以前の表記法を,位置番号を省いた小さい文字で併記した.ステロイド以外では(英語名では化合物名を中断して二重結合や置換基の位置番号を挿入する表記も普通だが),位置番号を前後にずらした従来の表記法に従う(butan-1-olはブタン-1-オールではなく,1-ブタノールとする).
 8 ある種の化合物は非常に多くの名称で呼ばれる.ときには化学的に誤った名称(和英とも)も流通している.見出し語にそのすべては網羅できないが,索引にはなるべく多くの名称(ただし,本文の見出し項目名と同じ和名は省く),記号,略号を載せた.したがって化合物の検索には本文見出しと索引を併用していただきたい.

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