社会福祉士は,社会福祉の専門的知識および技術を用いて福祉に関する相談・助言・関係者との連絡調整を行うことを業務とする専門職であり,「社会福祉士及び介護福祉士法」を根拠とする国家資格です。1987(昭和62)年に法律が整備され,1989(平成元)年より国家試験が開始されて以来,2020(令和2)年には第32回目の試験を迎えました。合格率の平均は,約30%であり,問題自体は特別に難易度が高いというわけではありませんが,18科目群のすべてで得点しなければならないことに加え総科目で6割以上の得点が求められること,広範にわたる科目を扱うと同時に深い理解も必要とされる問題も出題されることを考慮すれば,合格率の数値から受ける印象以上に難易度は高いということができます。
創設当初の社会福祉士は,核家族化の進行・家庭内扶養の低下を背景に主に障害者や急速に増加している高齢者の相談援助を担う者として,その活躍が期待されていました。それから30年以上が経過し,少子高齢化の急速な進行,失業者の増加,高齢者や児童に対する虐待,家庭内における暴力,更生保護における社会福祉的な援助など,社会福祉士が介入すべき分野は質・量ともに高まっています。また,その間に生活を支援する各種制度が整備され,社会福祉士はそれらに対応することが要請されています。
出題基準では,地域福祉系の科目や相談援助にかかわる科目が大幅に拡充されると同時に,保健医療・権利擁護・就労支援・更生保護について体系立った学習を行うことが求められるようになりました。本書では,こうした改正事項にいち早く対応し,学習の便宜を図るため,最新の第32回試験問題を中心に科目ごとに学習に必要な過去問の回数を設定,試験問題を出題基準に基づき再配列しています。解説にあたられた先生方は,社会福祉や医療の実践・研究・教育に熱心に取り組まれている方々であり,限られた紙面のなかで,ポイントをおさえ学習に役立つ情報をできうる限り盛り込んでいただきました。本書は,国家試験のための学習参考書としてだけではなく,広く社会福祉士教育の参考書として意義をもつものです。
社会福祉士を目指す方には,本書をご利用いただき,合格を果たされますことをお祈りいたします。また,指導にあたられる先生方には,本書を福祉教育にお役立ていただければ幸いです。
2020年4月
福祉教育カレッジ