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国試105 ― 第105回医師国家試験問題解説書
AEDの適応・使用法[2011/08/22追加]
p.147  [C-23]鑑別診断 5,9行目
「呼びかけや身体の接触に反応がなく,呼吸もない場合に心停止と判断する」とございますが,心停止の定義は「心臓の循環機能が途絶えた状態であり,具体的には,脈拍の触知ができないこと」ではないでしょうか。
(血圧計や心電図モニターがない)日常生活場面での「心停止」の判断は,傍に居合わせた人が行いますが,医療者と非医療者では方法が異なります。
 非医療者は「呼びかけや身体の接触に反応がなく,呼吸がみられない」ことで心停止と判断します。
 医療者はこれらの観察とともに「総頸動脈を触診して脈が触知しない」ことを加えて心停止と判断します。総頸動脈が触知しない場合の収縮期圧は60mmHg未満です(血圧の正確な値はこの時点では不明です)。
 ここまででおわかりいただける通り,選択肢考察「○a」の記載は非医療者向けで,医師が非医療者にAEDの使用方法を説明する際の「心停止」の判断方法を説明する内容となっています。
 非医療者に総頸動脈の触診を求めないのは,脈がうまく触知できなかったり,触知しないのに触知すると勘違いすることが多いからです。
 選択肢考察には非医療者でもできる「心停止」の判断方法と医療者の判断方法の両方を 書くべきだったかもしれません。記載が不十分だったことをお詫び申し上げます。
 くどくなりますが,救命処置では「心停止」は,呼びかけや刺激に対する応答がないこと(この時点で119番通報とAED取り寄せによる救命システムの立ち上げを行う),正常な呼吸や体動がないこと,を極短時間観察して判断し(医療者の場合はこれらの観察中に同時に総頸動脈を触診して触知しないことを確認して)胸骨圧迫式心マッサージを開始します。
 実際には心停止ではなく極低い低血圧や極端な徐脈である可能性もありますが,その場合でも有効な脳循環は途絶えている状態にあると考えられるからです。

分娩後出血[2011/08/22追加]
p.147  [C-23]鑑別診断 5,9行目
本例は収縮期血圧 68mmHg,意識障害(JCS二桁),脈拍140,皮膚蒼白,などから,「(出血性)プレショック」ではなくて「ショック」ではないでしょうか。
 ご指摘の診断基準は,あくまで救急診療におけるもので,冒頭には「ショックにはさまざまな原因があり,すべてに共通した診断基準を確立することは困難で,一定のものではない」という前置きがついています。
 産科ショックについても,当然診断基準はなく,教科書では救急診療の診断基準をもとに解説しているものが多いようです。
 プレショックに至っては,その定義を明確にしたものさえないと思います。
 この理由は,ショック,プレショックが発生した段階で実臨床的には,直ちに応急処置と原因の究明の検討をしなければならず,これが本当にショックかどうか診断基準云々という余裕はないし,臨床上も無意味だからです。
 私が「プレショック」としたのは詳細情報が不明であったので,逆に「出血性ショック」と書くと,どういう根拠でショックと書いたのかという問合せのほうが多々あると思ったからであり,プレショックのほうが読者に違和感を持たれないと考えたためです。
 したがって,明確な根拠はありません。
 改めて解説を読み直すと「プレショック」を数箇所で連呼しておりましたので,そういう目で見れば逆に違和感があったかと思います。
 つまり本問では,意識レベルやバイタルサインから「出血性ショック」との判断で構わないと思います。

PTSDの症状[2011/07/27追加]
p.447  [I-24]選択肢考察b,ポイント3行目
「感情(の)鈍麻」は統合失調症の症状であり,通常PTSDでみられる症状には「感情麻痺」または「情動麻痺」という用語を使用すべきではないでしょうか。
 「感情(の)鈍麻」は『改訂 精神医学入門(西丸四方著)』p.228によれば,「無感情,感情鈍麻Apathyという言葉も感情の表われない状態一般に用いられるが,統合失調症とは限らず,抑うつの時の抑制にも,種々の急性精神病の茫然状態にも,心因性反応にも無感情状態は見られる」とあり,統合失調症以外でも用いてよいことが記されています。しかし,同じページに「急性情動麻痺」という用語も記されており,「強い恐れの時に感情の空虚と無関心を引き起こす状態で,突然の大災害の時に見られる。しかし,意識は清明で,出来事は正しく観察認識されている」とあり,PTSDにおける感情の空虚感などを情動麻痺と表現することもあるようです。
 「感情鈍麻」「感情麻痺」「情動麻痺」のいずれも状態像を表すだけの用語であり,疾患との一対一対応を示すものではありませんし,厳密な区別はしていません。臨床の実感がないと精神病理学用語は非常に難解です。たとえば,対話性の幻聴や関係妄想などは重症うつ病でも認められる時もあります。
 以上から,「感情鈍麻」「感情麻痺」「情動麻痺」のいずれを使用しても問題はないと考えます。